Tears of Angels 第二章

天上連合軍本部・・・
時代外れの要塞じみたその飾り気の無い建物は、
その名の通り空中に浮かんでいる。
一ヶ所に留まるではなく、無限に広がる実態の無い庭を
滑るようにゆっくりと常に移動していた。
そのちょうど真ん中あたりに一番大きい建物の一角に、
インターコムを通じて機械的な声が響き渡った。
『天使02 セアルダ・ゴールドバーグ様・・・12号室にお入りください』
指紋と声紋を確認し、扉が開いてセアを招き入れた。
目の前に立っているのは自分の神機、ラファエルだ。
背後で扉が音もなく閉まり、周囲を何気なく見渡しているうちに、
天井付近のスピーカーからさっきと同じ声が話し掛けてきた。
『神機に乗ってください』
「封印輪は?」
『・・・着けたままで結構です。戦闘をして頂くわけではありませんので』
しばらくの沈黙の後、事務的な応えが返ってきた。
別に温かいお言葉を期待していたわけではないが、
こちらもついそっけなくなってしまう。
「それもそうだね」
それだけ言うと、セアは神機のほうに手を伸ばした。
すると、ラファエルの胸の辺りの丸い核から光が差し、
それが消えたと思うと搭乗者はすでにコックピットに納まっている。
そのまましばらく待ってみたものの、次の指示が入ってこない。
そしてまた周囲を観察しながら、セアは少し考えながら口を開いた。
「[・・・なぁ]」
ラファエルの声とかぶさった。
さすが天使とその神機、考える事はほぼ同じであるらしい。
勿論こんな事はいつものことで、
二人同時に何か言った時はセアが先、と既に決めてある。
「何で急に適性テストなんてやらされるのか・・・って思ってたんだけどさ」
[さぁねぇ・・・でも多分あの人の群に関係あるんだろうな]
「やっぱそうだよな・・・」
心なしかか憂鬱そうに視線を動かした先には、
壁のガラス張りの部分に所狭しとへばりつくようにしてこっちを見ている、
天使候補の面々だった。

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