エリスが目覚めの悪い朝を迎える半日と少し前・・・
連合軍本部敷地内の中心部からやや外れた場h祖にある天使寮棟の一室。
『02』と銘打たれた防音のドアは、
中から響いてくる騒音を遮り切れないでいた。
「何してんだアイツ・・・」
アストは驚きと呆れの混ざった声を上げた。
コーリアに呼び出された四人は大急ぎで自室に戻り、
そのうち三人はすぐに着替えを済ませ再び集まっていた。
そして待っても待っても姿を現さない残りの一人の様子を見に来たという訳だ。
この物音では呼び鈴も聞こえないだろうと判断し、
アストはドアの開閉バーに触れてみる。
予想通り扉はすんなり開いた。
鍵を掛けるという事を知っているのかどうか怪しいものである。
恐る恐る中に入り、得体の知れない物が散乱している隙間を何とか縫って進む。
ようやく奥のドアにたどり着いた。
怪物が暴れているような音は相変わらず続いている。
開けたら何か降ってきそうで一瞬ためらいながらも戸を開いた。
アストの目に飛び込んできたのは、山のような服に埋もれた熊・・・
ではなくセアだった。
衣類との格闘に夢中なのか、こちらには見向きもせずそこらを引っ掻き回している。
この有様とまだ着替えていないセアを見て改めて何をしているか訊く必要はなかった。
「制服はベッドの下の灰色のケースの中だよ」
ずばりと言いのけられたセアはギョッとした視線をアストに向けた。
「そっ・・・そうだよな!知ってたんだぜ俺は。
ちょっとここらを片付けてただけで・・・」
この期に及んで言い訳をする必要もないだろうと思いながら、
ひきつった笑顔とともにベッドの方へ行こうとしてベルトにつまづくセアを見る。
前回の大掃除の時に声を大にして「制服はこれに入れとくから!」
と手伝う天使三人の耳にタコを作ったのは他でもないセアだった。
「ホールで待ってるから〜」
ベッドの下からホコリだらけのケースを取り出し、
無事制服を発見したセアにそういい残して部屋を出た。