静かな音を立てて扉が開き、数名の人が入ってきた。
つい今さっきまで囁き合いの絶えなかった教室内が一瞬にして静まり返る。
その目線の先には、彼らの最大の憧れ、目標である選ばれし者達、
天使四人の姿があった。
再び室内がざわめきでいっぱいになった。
教壇に立った四人に全員の羨望の眼差しが向けられる中、
数少ない女子生は違った意味の熱い視線を少なからず紛れ込ませていた。
ライズとそのとりまきももちろんその一部である。
エリスも他の皆と同じような目つきで四人を見ていたが、
早くも諦める気を持たずにはいられなかった。
四人の天使の周りには、他とは違う雰囲気が漂っていた。
異次元の空間を切り取ってきたような感じさえする。
暖かく、それでいて近寄りがたい空気。
世界が違うような感じがするのに、懐かしいものがこみ上げてくる。
大勢の視線を受けても全く動じない落ち着いた表情・・・
向かって右端の一人を除いて。確か04だ。
時々お互いに言葉を交わし、
ちょっと笑ったりさえしている。
そんなほんの少しの行動にも入り込めない何かがあるようで、
ましてや童顔気味のエリスなど忍び寄る隙もないように思えた。
こうしてエリスが夢を半ば放り出しかけていた頃、
ライズは一人の男性を見つめ続けていた。
時にごく小さな声で何かつぶやきながら。
彼女の目には、ジェシル・レイゾック、
プレミアその人ただ一人しか映っていなかった。
十五歳という驚異的若さで天使になった彼。
三年でミカエルを乗りこなすまでになり、
かつてないほどの適性で当然のようにプレミアの座に収まった。
この私にこそぴったりだわ、
とライズはそれこそエイド三級になる前から思っている。
大富豪の一人娘である彼女のこういった過剰な自意識には、
エリス始め彼女を知る者の大多数が迷惑を被っていた。
当然ジェシルが教壇の上に登った動作の一つ一つを、
食い入るように見つめていた事は言うまでもない。
そうこうするうちにそのプレミアが一歩前に進み出てきた。
その動き一つだけで、全員の口が動きを止め、
視線が一箇所に集中したのだった。

→第四章